萩原朔太郎 片恋『青猫』よりThe Unrequited Love from " The Blue Cat "




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Summary: Supported by patron member of the club, 南風舎 萩原朔太郎 片戀 市街を遠くはなれて行つて僕等は山頂の草に坐つた空に風景はふきながされぎぼし ゆきしだ わらびの類ほそくさよさよと草地に生えてる。 君よ辨當をひらきはやくその卵を割つてください。私の食慾は光にかつゑあなたの白い指にまつはる果物の皮の甘味にこがれる。 君よ なぜ早く籠をひらいて鷄肉の 腸詰の 砂糖煮の 乾酪のご馳走をくれないのかぼくは飢ゑぼくの情慾は身をもだえる。 君よ君よ疲れて草に投げ出してゐるむつちりとした手足のあたりふらんねるをきた胸のあたりぼくの愛着は熱奮して 高潮してああこの苦しさ 壓迫にはたへられない。 高原の草に坐つてあなたはなにを眺めてゐるのかあなたの思ひは風にながれはるかの市街は空にうかべるああ ぼくのみひとり焦燥してこの青青とした草原の上かなしい願望に身をもだえる。